元・宝塚総支配人 森下信雄さんの3冊目の著書
2015年に出版された「元・宝塚総支配人が語る「タカラヅカ」の経営戦略」。
内部の方が書かれた本ですのでとても興味深く読みました。
800円+税。
そして、昨年、2019年12月に出版された「タカラヅカの謎 300万人を魅了する歌劇団の真実 」も読みました。
「タカラヅカの謎」からわずか半年後、2020年5月、コロナの脅威が身に迫った中で書かれたのが「宝塚歌劇団の経営学」です。出版は2020年10月。
既出のネタが殆どで、すごく中途半端な本
ところどころ、経営学っぽい言葉が出てきますが、「経営学」と思って読んだら肩透かしだと思うのですが?
誰に向けて、何を著したかったのか?
タイトルに「経営学」と付いていますが、ファン向けだと思います。
一応経営学っぽい用語が出てくるのは、タイトルが経営学だからで 殆どが宝塚の男役とファンの関係、それが消費行動につながり利益をもらたらすというお話でした。
2015年出版の「元・宝塚総支配人が語る「タカラヅカ」の経営戦略」は、宝塚仲間でも話題の作品でしたし、「元・宝塚総支配人」が語る、というところに興味をそそられていました。
今まで知らなかったこと、内部のことが 垣間見えてとて興味深く読みました。
そして昨春読んだ 「タカラヅカの謎」。
「タカラヅカの経営戦略」ほどではないにしても、久しぶりの森下氏の著作なのでいろいろとメモを取りながら読んでました。
前の2冊に書いてあること、「既出ネタ」だらけ。
先程、Amazonの評価を見に行ったら、★ひとつの方のレビューに
「過去の著書の焼き直し」とありました、まさに!!そのとおり!!
ちょっと考えればわかるようなことを長々と説明して…
もう、さっきも出てきたことをまた? とくどくど何度も出てくる話にうんざり。
後半は、特にその傾向が強かったのは…
あとがき、参考文献含め 244ページのボリュームにするために、文字水増し?って思いました、はい、深読みhappyが…w
前2作は、新書でしたが、今回はハードカバーの単行本。
それなりの枚数をこなすために 同じような例や言い回しが頻出して、またか…と嫌になってきます。
この本から 虚構、垂直統合システム(1冊目に書かれてた)、価値共創と言う言葉を覗いたらページ数ぐっと減ると思いました^^;
森下さんは元宝塚歌劇団だから書けること、書けないこと
内部にお詳しいので(当たり前^^;) ファンの知らない事、うすうす知っていることを改めて文字にされているので、スッキリしたこともありますが、
は??と思う点もあり、劇団にお気遣いなのね、なんだかもやもやするわ。
宝塚のビジネスモデルの特色は「サイクル化」
続編や、再演ものは安心感、信頼感がある、とし、
なじみ深さ(再演続編)と目新しさのバランスを取りながらサイクル化することがリピーターを生んでいると。
もちろん、それもあると思いますが、リピーターが多いのは、ファンクラブの会員が、贔屓の生徒さんに会いたさ観たさに通うことも理由のひとつ。
特に、入待ち出待ちで生徒さんに直接お手紙を渡せるのは、観に行くからこそ(チケットがなくても渡せますけど)。
それに、公式では余ってないチケットも、FC内では大量に余っていることもままあり、会から、「観ませんか?」としょっちゅうメールがある、というのはよく聞く話です。
ファンクラブはチケット争奪戦に勝ち残るために作り出されたコミュニティ
「ファンクラブに所属すれば複数回観劇できる可能性は格段に高くなる」と書いていますが、なぜ格段に高くなるのか、言及していない。
キャストは音楽学校卒の生徒限定で組単位
月組で上演の「エリザベート」のエリザベート役を、わざわざ、宙組の!!男役の!!凪七瑠海をキャスティングした事。
当時 ファンがざわついた出来事でしたが?
ファンは同じ組の一定の環境下で成長のプロセスを楽しむので大抜擢はない
は?? 大抜擢あって大炎上した、夢華あみさんの事をよもや忘れたわけではないよね?
2010年4月入団したばかりで2ヶ月後の6月から上演の水夏希さよなら公演の「ロジェ」で新公ヒロイン。
翌年2011年1月、音月桂トップお披露目公演「ロミオとジュリエット」でなんと、まだ入団1年を待たずして、本公演のヒロイン(役替りあり)に!!
そうでなくても、96期の主席で、96期いじめ裁判の重要人物だった研1の生徒を大抜擢。
この無理矢理な抜擢で大炎上しました。
結果 森下氏のいうところの「ファンと劇団の信頼関係」を劇団自らが壊した為に、失望したファンが離れていったことは、当時宝塚を観ていた人なら誰でも知っている事実ですが。
「清く正しく美しく」の真意
ファンと劇団の価値共創を末永く伝達する手段として、この言葉を採用した、とありますが…
「清く正しく美しく」の言葉は、1930年に刊行した、川端康成著「浅草紅団」と区別するために小林一三が苦肉の策で作った標語なんです。
宝塚100周年の頃に、何かの記事で目にしました。
浅草の街をさまよう不良少年少女パフォーマンス集団「浅草紅団」首領の中性的美少女に案内され、浅草の裏社会に生きる人々の有様を綴る「私」のルポルタージュ風な物語。
こちらの少女パフォーマンス集団は清く正しく美しい少女たちですよ。と。
そして、当時の演芸の中心地浅草に拠点をおかず、あえて日比谷に置いたのも、紅団と差別化するためだったんですよ~?
読む価値があるのか無いのかw
前作を読んだことがないなら、一読の価値はあります。
ただし「経営学」というタイトルに合わせようと、経済用語をところどころ散りばめていますが、殆ど、前作と同じ 宝塚と阪急の垂直統合システムと、ファンと宝塚についてです。
大学も休講になった頃に、書いてみようと思われたのかもですが。
森下信雄さんは、1998年~2011年 宝塚歌劇団にいらしたようです。
もう10年も前のことでいろいろと変わっていると思います。
当時の理事長は、小林公一さんでしたが、その後、小川友次さん、そして現在は木場健之さんが理事長を務められています。
宝塚の基本理念は変わらなくても、理事長が変わると、宝塚歌劇団も少なからず影響を受けるでしょうから、森下さんのお話も、「昔話」になりつつあるのかもね。
10年一昔、といいますから。
とは言え、内部事情を知る楽しみもあるので 気になる方は読んだ方がいいです!!
1600円+税。お値段2倍なのに、内容被ってて、お値段以下だわ。
私はご覧の通り、図書館本です。
もの増やしたくないのよ~♪