宝塚ブログ 心は青空♪

夢の世界☆宝塚のあれこれを語ります♪ 5組観劇派

【元宝塚演出家】上田久美子さんの挑戦と本音

上田久美子さんの発言にネットがちょっとざわつきました。

 

朝日新聞の記事を読んだのは、10月24日の月曜日。

 

「推し活」の舞台から脱却

…という見出し。

 

宝塚では「上田久美子先生ファン」もいらして(私もその一人)、ウエクミ先生の作品が好きな方は多いです。

 

『月雲の皇子』『翼ある人々』『星逢一夜』『金色の砂漠』『神々の土地』『桜嵐記』

 

どの作品も、観終わった後も、熾火のように胸の中でいつまでも熱を持っていて、ずっといろんな登場人物の人生について考えてしまいました。

 

もう、上田久美子さんのあのような作品を見ることが出来ないのが残念です。

ウエクミさんは、演出家を続けていかれるにも関わらず、です。

 

大学卒業後、製薬会社勤務を歴て、宝塚に入団。

演劇をイチから学んでのご活躍でした。

マーケットリサーチをして作っていた、と退団直後のインタビュー記事で読みました。

 

私達、宝塚ファンの好みそうな作品を作ってくださってたんですね…

 

いつごろから、退団の意志を固められたのかはわかりませんが、2020年宙組の『FLYING SAPA』は、宝塚色を排した、異色の作品でした。

思えばあの頃からすでに…

 

自分の思い描く作品作りをしたい、というウエクミ先生の気持ちをひしひしと感じました。

 

宝塚お約束のフィナーレもないので、観終わったあとに忘れ物をしたような不思議な感覚に襲われました。

 

上田久美子さんが、退団後に演出された『バイオーム』は、宝塚では絶対にできないような人物設定でした。

 

何ものにも縛られず、使いたい役者を使い、描きたいことを描いて舞台に載せる、というのはとても理想的です。

 

宝塚の座付き演出家は、少なくとも、番手にあった配役をしなくてはならないし、お役は、生徒さんの持ち味が出せるお役が理想的ですし、

70〜80人の生徒を、盆やせりなどの舞台機構も使って華やかな舞台にすることを求められます。

ときには、劇団から、この子を使って、などと不本意な押し付けがあったのかも?とフカヨミ。

 

100年以上続いてきた宝塚歌劇団で座付き演出家を続ける、ということはそういう事。

 

上田久美子さんは、ご自分の実力をもっと広いフィールドで試したくなったのかな、とお見受けしました。

 

演出を手掛けられた『桜嵐記』の楽後から? 準備のために昨秋から断続的にパリに行ってらっしゃるそうです。

 

知名度のある俳優が出なくても、作品の中身を見にくる」という、ヨーロッパの観劇事情を理想とされているのですね。

 

公演の内容を見るより、スターに会いにいき、スターとの関係性を確認する場になっている」ことをよしとしないウエクミ先生。

 

確かに、トップスター退団公演の内容が駄作でも、スター人気と、最後だから!と大盛況。

 

人気のスターさえ揃えておけば、芝居の中身はどうでもいいのか?と疑問に思われたのでしょうか…

 

以前読んだ『元・宝塚総支配人が語るタカラヅカの経営戦略』という本に、著者の森下信雄さんが書かれています。

 

宝塚歌劇はトップスターが「立っている」(カッコいい)ことが公演成功の絶対条件なのです。

つまり、「本は無茶苦茶、でもトップの○○さん、とってもカッコいい! あの流し目と決闘シーンを見るために何回も大劇場に通うわ!」の方が遥かに評価されていることになるのです。そして、事実、チケットも売れていくのです。

『元・宝塚総支配人が語るタカラヅカの経営戦略』P30 より引用

 

この文章を読んだ時、「本は無茶苦茶でもいいんかい!」って突っ込んじゃいました。

 

宝塚では、スターの魅力>作品 とはっきりと書かれています。

 

演出家の存在意義は、スターの魅力より小さいの?

 

今回の朝日新聞の記事にも、

金銭的な貢献がスターの人気のバロメーターになり、自分が育てたんだと存在価値を見出すんです」(上田久美子さん談 朝日新聞記事より)

 

日本では、スターを見にくるファンに頼る商業的な舞台のほうが発展しやすい。

どうにかしてこの傾向にレジスト(抵抗)したい

あまり健全とは思えない、人間関係の消費というコンテンツをつくるために生きていたくないから

2022年10月24日朝日新聞 MONDAY KANSAI 劇作家・演出家 上田久美子さんより引用

 

上田久美子さん、宝塚歌劇で相当ストレスためておられたんじゃないかしら?

 

芸術には、パトロンの存在が不可欠なように、宝塚にも谷町が必要、という土壌があわなかったのでしょう。

 

上田久美子さんは、純粋に芸術としての舞台、客寄せパンダ的スターがいなくても成立する世界を理想とされているんですね。

 

以前、外の舞台を観た時に、主演は、テレビでおなじみの超有名人で、ものすごいチケット難でしたが、芝居のクオリティには満足出来ませんでした。

 

それでも、チケットが飛ぶように売れたから、「成功」なんですよね。

 

お金を出すのは観客なので、観客が喜ぶもの、チケットをゲットしたくなる作品が求められるということです。

 

スター重視の傾向にレジストしたい上田久美子さんの挑戦は、興味深いです。

今後、どんな作品を書いてどのようにチャレンジを続けていかれるのか、すごく興味があります。

 

フランス留学後に、新境地を開いてさらに進化されるかもしれませんね。

 

でも…舞台の世界は、清濁併せ呑む覚悟がなければ、やっていけないところのようにも思います。

 

上田久美子さん、健康に気をつけて頑張ってください!!!