夢千鳥、栗田優香先生の演出家デビュー作にして、ダンス、歌に定評がある宙組の4番手・和希そら主演の注目作。
それなのに…緊急事態宣言発出により、6公演で打ち切り。
残念過ぎる~!!というファンの声に、劇団が動いた!!
無観客公演をディレイ配信。
いつ撮影されたものかわかりませんが、あの舞台の感動は、一人でも多くの人に観てもらいたいし、感動を共有したい!
…ということで 今回も配信観ました。
ホテルスヴィッツラハウスに、トップコンビと2番手、3番手のメインどころが揃って振り分けられて、裏のバウホール公演では、4番手のそらくん(和希そら)が、主演を張るこの「夢千鳥」が、素晴らしいクオリティの作品になっていて、もう語らずにはいられません。
宙組の層の厚さを実感しました。
こんなに役者が揃っているなんて!
竹久夢二、他万喜、彦乃、お葉、東郷青児 きちんと描きこまれています
和希そら(竹久夢二)、天彩峰里(他万喜)の迫真の演技に引き込まれました!
幕開き
子供の夢二(真白悠希)が父親(星月梨旺)に、「もっと男らしく強くなれ」と怒鳴られ、大切にしていた、きれいな布の詰まった小箱を囲炉裏に焚べられるシーンがあります。
こういう環境が、のちの夢二の人間形成に影響した…というベースの部分なのかも。
登場人物紹介のプロローグのダンス場面で 夢二(和希そら)が 他万喜、彦乃、お葉、3人の女性と絡んで、本編への気持ちの盛り上げとなってます。
他万喜をめぐるライバルの東郷青児(亜音有星)も…^^
夢二より2歳年上の凛とした「大人の女性」を演じたじゅりちゃん(天彩峰里)の演技が素晴らしかったです!
歌うまの娘役、のイメージでしたが、今回のお芝居では前作の「アナスタシア子役」とのギャップが大きい役ですが、滑舌も良く、力強く、他万喜を好演してましたね。
他万喜をモデルに絵を描くために「赤ん坊を誰かに預ければいいだろう」、と言う夢二に
「そうしたいのはやまやまですけどね!お給金払えないんですよ。誰かが絵を描かないから!」言い放つ! ひょ~かっこいい!
で、他万喜の亡くなった夫が高名な画家だったことで、劣等感を持っている夢二は、勝手に 自尊心傷ついて ぷいっと出ていきます。
画家たちは、夢二のことを「大衆画家」と呼んで相手にしていないので、
画学生の彦乃が、「先生のこと尊敬しています!絵を教えて下さい!」と言っても、亜流画家だから、と一旦は断ります。
が!彦乃の熱意に負け、生来の惚れっぽさで彦乃と逃避行。
ダメンズ 夢二。
かなり屈折している夢二、不機嫌だったり、怒ったり、口づけを交わしたり。。。と気持ち大忙しな夢二の感情をそらくんが丁寧に演じて大熱演でした。
いつも元気で明るくて、お茶目なイメージのそらくんが、全然違う持ち味出してきた!
新たな扉を開け、飛躍のチャンスを掴んだのでは?
芝居を頑張りたい、と言っていたそらくんに、この難役を当ててくださった、劇団・栗田優香先生に感謝です。
そらくん、じゅりちゃん共に、丁々発止のやり取り。
以前のお二人が主演コンビだった「ハッスルメイツ!」でも、「壮麗帝」の夫婦役でも観れなかった愛憎入り交じるシーン。
芸者の菊子(花宮沙羅)が港屋で買ったという千代紙は、夢二が描いたものではなかった…夢二激怒!
他万喜を愛しているからこそ、東郷青児の接近に嫉妬心を掻き立てられ、
男としても、絵を学ぶ者としてもライバル東郷と親しくする他万喜を許せない、
怒りのタンゴ。
タンゴのマイナーでありながら激しい曲調、
真っ赤なライトを浴びて着物で激しく踊る二人のタンゴは緊張感があって、目が離せませんでした。
こんなシーンを観れるなんて…思いもしなかった、ブラボーです!
他万喜は、夢二が彦乃に惹かれているのを見て、彦乃をお嫁にもらいましょう、私はあなたの姉として一緒に住みます…
彦乃の両親に頭を下げにいく他万喜の「お嬢さんはもう…女です。」ゾクリとしました。
夢二の才能を買い、ベストの環境で絵を描かせてあげようという他万喜の思い。
号泣する他万喜を、見て、無心に筆を走らせる夢二。
狂気のような二人の愛を舞台で可視化した栗田先生、お見事ですっ!
二人のミューズ 彦乃の山吹ひばりちゃん(105)、お葉の水音志保ちゃん(101)
今回も、新人公演が中止になっていたこともあり、「若手を起用する」という意味合いもあったのだと思っています。
娘2のポジションに、硏3、105期の山吹ひばりちゃん。大抜擢ですね^^
とても可憐で、お歌もお上手。
今まで、こんなにたくさんのセリフ、相手役とガッツリのお芝居をされたことがなかったのに、いきなりの大役でしたね。
大健闘でした! 夢二が惚れるのも納得の可愛さ、可憐さ。
しかも美人薄命のおまけ付き。
セリフ回しは、まだまだ舞台人らしからぬアニメ声に思いましたが、まだ硏3になったばかり、これから伸びしろたっぷり、楽しみな娘役さんです!
そらくんの笑顔を一番見れるのが彦乃との場面、ほっこりするシーンでした。
それ以外は、いつも苛立っているので、観ててしんどい部分がありましたが。
二幕から登場のお葉のひろこちゃん(水音志保)。
美人さんだな~と以前から思っていたので、今回の抜擢も、3人目のミューズも納得です。
明るくて、お葉も、ズバっと夢二の痛い所を突くところがかっこいいです!
行かないでくれ~とすがる夢二に
「結局 先生は誰も愛していなかったんじゃないんですか?」
その言葉に、うろたえる夢二。
そらくんは、夢二という役を体現するのに、すごく体力と精神力を消耗したのでは?と思います。
役者は、その人物になりきるほどに 役を掘り下げますが、夢二は劣等感や、嫉妬心を紛らわすように女性との愛に溺れていった人、それは、普段のそらくんとはかけ離れた存在だから。
でも役者としてステップアップしたはず。今後の芝居に活かせるといいですね^^
じゅりちゃんや、ゆきの(亜音有星)も、今までにない挑戦だったのでは?
これからのお芝居に期待してます!
美しい演出と、スムーズな舞台運び
切ないストーリーは、胸にキリキリと痛みをもたらします。
が、視覚的に、とても美しい世界でした。
鳥をキャストの象徴としているので 鳥の羽根が効果的に使われています。
キャストの鳥役が去った後に、羽根が落ちていたり、
夢二が切りつけた座布団から真っ赤な羽根が飛び出してきたり…
港屋繪草紙店の店先の小物も、奥へ通じる引き戸にステンドグラスもきれいです。
(装置・新宮有紀、小道具・増田恭兵)
一幕ラスト、長崎で病の床に伏した彦乃を父・笠井宗重が連れ帰ってしまいます。
病気が良くなったら 桜を見に行こうね、と彦乃と約束していたのに。
悲しみにくれる夢二に 桜の花びらが雪のように舞い落ちてきて…幕。
なんて 美しく叙情的なのでしょう♪
暗転が長いとか、幕前芝居多用は、駄と言われてしまいますが、「夢千鳥」は、場面転換がスムーズ。
上手セットと下手セットをうまく切り替えて、無駄な時間なし。
暗転させる時は、クラブの歌手(花音舞)の歌唱場面とし、スポットを当てて場面転換タイムにしていますから、自然な流れです。
その他のキャスト 印象的な場面
美風舞良
この公演が宙組生としてラストですから 配信があってよかったです。
今まで美声で魅了していただきましたが宙組名物「シトラスの風」の明日へのエナジーでの歌唱、素晴らしかった…もう「シトラスの風」は封印かしら?
今公演、彦乃の義母や女学校の先生、記者などでご活躍でしたが フィナーレのショーのデュエットダンス場面での歌唱…胸熱でした。
花組でもさらなるご活躍、お祈りします。
凛城きら
バーのマスター。すっとぼけた感じがすごくいい! 一服の清涼剤みたい^^
芸鼓遊びの待合の場面も、「一人で飲んでないで、仲間に入りなよ~」と徳利持って夢二を誘いに行くところも自然体で^^
「甘えてるのはじろちゃんだよ」と 苛ついて絡んでくる夢二にさらりと言ってみたり。芝居巧い!
ここのバーは、昭和と大正の切り替えに使われてます。栗田先生のアイデアですね~♪
留依蒔世
バーでは、りんきら(凛城きら)に雇われてる紺野ですけど、そらくん、りんきら、あーちゃん(留依蒔世)、3人の場面は ここだけ違う世界で アクセントになってました。
ソロもらってましたね。
もともと ダンスも歌もできる人なので、外箱できちんと使われててよかったです!
若翔りつ
彦乃のお父さん役。
二幕最後の、青い鳥について語る場面は、もう泣きそうなぐらいかっこよくて、染みました。
お芝居も迫力もあり、我が子への愛情も感じさせて巧かった!
オーシャンズ11のブルーザーのイメージが強くて…
でも、こういうしっとりとした演技を見れてよかった…次回作にも注目です!
自分用記録
カゲソロ
一幕 みなとカゲソロ 真名瀬みら
二幕 宵待草カゲソロ 美風舞良
青い鳥カゲソロ 山吹ひばり
この作品、生田大和演出「春の雪」のときと同じ、
後から何度でも思い出して反芻したくなるような、時間が経っても、心の中で熾火のように感動が燃え続けているような 忘れがたい作品になりました。
主演のそらくんの芝居はもちろん、相手役のじゅりちゃん、初長台詞を頑張った若手の皆さん、「夢千鳥」組のメンバー全員素晴らしかった。
この体験は、必ず今後の芝居に生きてくると思います、宝物ですね^^
素敵な作品を作ってくださった 栗田優香先生、ブラボーですっ!!
ありがとうございました。
この作品と出会えてよかった!
観たいのに観れなかった方に絶対観てもらいたかったから、配信の決定はありがたく。感謝、感謝です。
スカイステージでの放送待ちきれな~い!!