『蒼穹の昴』
2022年10月25日 11時公演を観てきました。
何事も好みが分かれると思うのですが、この作品、ワタクシは大好きです!
原作本は、1〜3巻を2018年に読んで、この度、3巻と4巻を読みました。
この壮大なスケールの作品を宝塚の舞台にのせる、と聞いた時はびっくりでした。
一体どうなるのか、描ききれるのか、と気になっていたところに、
主演は、梁文秀、2番手が李春児(春運)、と聞いて…えっ??
原作本と違うので観て違和感はないのだろうか?とちょっと心配してました。
原田先生、ごめんなさ〜い! 素晴らしかったです!
全然違和感なし!
先生が、咲ちゃん(彩風咲奈)で梁文秀、ピンときた、とおっしゃったのも納得ですし、
春児を演じられるのは、あーさ(朝美絢)しかいない!
ひらめちゃんの幼少期のあどけなさ、可愛い、大人の女性になってからは純真で初々しい♪
原作ではあまり濃く描かれていないので、トップ娘役らしからぬお役だと思いましたが、演出でいい感じで…夫・譚嗣同との場面もほのぼのしていて 数少ないほっこりする場面。
原作では、はっちさん(夏美よう)演じる楊喜楨は文秀の義父ですが、そのあたりは割愛でしたね。
志を同じくする者として描かれていました。
観るたびに深みが増していき、細かいところまで目がいくようになるから、毎回新たな発見があって楽しいです。
それは、細かいところまで作り込まれてるからなんです。
胡同(フートン=横丁・路地)の、お店屋さんも一軒一軒よく作られてます。
豪華な紫禁城のセットの模様も実物に忠実に作られているそうで、素晴らしい♪
初回は、ニュアンスでサラサラと流れてしまっセリフも、美しく、格調高い日本語でうっとりします。
戊戌の変など、政治的な動きもわかりやすく描かれていて、
本も読んでないし、「蒼穹の昴? 興味ないわ」と言っていた友人も、初見から、わかりやすかった、と言っていたのは、やはり原田先生の手腕でしょう。
長編小説なので、時間制限のある中、「かいつまんだ」感じになるのは否めませんが、場面転換もスムーズで、ストレスフリー♪
とにかく演出の妙にも唸り、めちゃくちゃ楽しんでます^^
日清戦争の場面と阿片窟の場面のダンスシーンはどちらも素敵なシーンで食い入るように観てます。
娘役さんは、今回はほとんどがモブなので、あちこちでアルバイトされてます。
女官の愛すみれちゃんは日清戦争では兵士ですし、光緒帝の皇后の野々花ひまりちゃんは阿片窟にいます ^^
日清戦争もメロディがいいのでワクワクします。
日本軍の勝利を、せり上がりで表現しているのも好き♪
阿片窟は、布使いが素敵です。(振り付け AYAKO先生)
そらくんと爆弾を取り合うのは、長身の蒼波 黎也くん(104期)、覚えました^^
紫禁城で詔を乱発する光緒帝(縣千)のシーン、ひたすら書き続ける皇帝に、効力を持たない詔書が上から降り注いで幕、の場面も好き^^
今回、渾身の演技で話題のつーちゃん(天月翼)の安徳海も味があります、彼の奏でる二胡の調べが哀愁を帯びていて…清朝のあの時代にいざなわれます。
専科さんが全員素晴らしいので、この作品に6人の専科さん特出、感謝です!
なんと言っても西太后役のヒロさんの演技が圧巻!
衣装の豪華さもさることながら、存在感、説得力のある重々しいセリフ回し、いっぱい聞いていたいです。
西太后は中国の三大悪女のひとり、というイメージを払拭するような、慈悲深い女性として描かれています。
世間的には権力の座にしがみついていたように思われているけれど、こんな辛い立場を経験するのは、私ひとりで充分、と幼くして皇帝の座についた光緒帝の人生を憂えています。
下級貴族の出で、北京ではいじめられていた、という思い出話をする場面も。
はっちさん演じる楊喜楨は、西太后にはっきりとものを言う、変法のリーダー、頼もしい!
重々しいお役、お似合いです。
伊藤博文公役・ゆうちゃんさん(汝鳥伶)は、出番は少ないですが、ラスト近く、日本公使館へやってきて文秀に語りかける言葉は、心に残ります。
ゆうちゃんさんの、一言一言噛みしめるように語られるセリフが響きます。
悪役の栄禄は、悠真倫さん、本当に面白い、というかお上手! 楽しいです^^
預言者・白太太の京三紗さんもお上手。
春児に、生きる希望を与えました、春児の胸に希望の昴を埋めたのは白太太。
「誰が春児に本当のことなど言えようか…」
嘘から出たまこと、とはこの事だわ^^
李鴻章役は、カチャ
途中政治の表舞台から姿を消すので出てこないですが、栄禄に剣を突きつけるところは胸のすく思い^^
みなさん、いい仕事して、雪組をもり立ててくださってました。
初日のTwitter情報で、音楽聴くためだけでも通える、フィナーレだけでも通える、と聞いて、ワクワクしてたのですが…
玉麻尚一先生の音楽が、素晴らしい!
ほんまや〜 音楽だけで通えるわ。
そして、そのお歌を歌う皆さんがお上手! これ大事!
せっかく感動が胸にせり上がってきてても、涙が引っ込むこともあるけど、ほんとに、気持ちよく酔わせてくれます。
咲ちゃん、お歌お上手になりました…というか、声量UP、咲ちゃんのやる気がひしひし伝わってきます。
後半、銀橋での歌唱は、毎回、涙と鼻水?流しての熱唱!
あーさ(朝美絢)、そらくん(和希そら)、まみちゃん(一禾あお)、
専科のカチャ(凪七瑠海)にヒロさん(一樹千尋)さんもソロありでみなさんお上手で聴かされました。
音楽がいいので、ワタクシは『エリザベート』的位置づけの作品として楽しんでます。
原作からして、恋愛色は薄く、熱愛や嫉妬のような愛にまつわる愛憎劇がなくても激動の清朝末期のドラマは、興味をそそられます。
日本においては江戸末期(大政奉還)も、ひとつの時代の終わり、というのはドラマがありますね。
日本では、明治維新に血が流れましたが結果的に近代日本の礎ができました。
清朝の文秀たちも、日本の維新を見習おうとしてたのに…残念。
文秀は、玲玲(朝月希和)と船で日本に向かいます。
ここが泣ける!
泣くのをずっと我慢してきた玲玲が初めて 文秀の胸で泣く!
見送りに来た 銀橋の春児。
ニコニコニコニコ、あーさのキラキラのあどけない笑顔に泣かされます。
笑顔だから泣ける、胸に温かいものがこみ上げて幕。
この作品にかける、雪組の生徒さんたちの意気込みが舞台から溢れてました。
みんなで、絶対に芸術祭賞を取ろう!と一丸となっている感。
本当に素敵な作品。
フィナーレのこと書いてないけど、また今度。