大阪駅直結のJPタワー内に3月27日オープンしたMBSスカイシアター。
そのこけら落とし公演のひとつが、ブロードウェイ・ミュージカル『カムフロムアウェイ』です。
『カムフロムアウェイ』本日、4月8日 13時公演を観てきました。
100分、ノンストップの熱い舞台でした。
目次:
2001年9月11日の同時多発テロ事件の影響で、アメリカ国内に着陸出来なくなった38機の飛行機が、カナダのニューファンドランド島にある小さな街、ガンダーに緊急着陸した際に、街の住民と乗客に起きた5日間の物語。人種、国、宗教、言語が異なる者同士が困難な状況で助け合いを通じて真の絆を生んでいく。
引用元:日刊スポーツ 2024.3.25
⚠️ネタバレあります、未見の方はご注意ください。
ミュージカルスター揃い踏みの貴重な舞台!
ブロードウェイ・ミュージカル『カムフロムアウェイ』の上演が発表になった時にキャストに驚きました。
全員、主役級の役者さん、ミュージカルでおなじみの俳優さんばかり!
よく、これほどの主要ミュージカルスターを一度にキャスティングできたな、とその奇跡に驚くとともに、感謝の気持ちでいっぱいです!
通常のミュージカルのようにプリンシパル+脇役+アンサンブルという構成ではなく、
「主人公が不在の群像劇」(日刊スポーツ)
言ってみれば、全員が主役で全員がアンサンブル。
スリリングでスピーディな展開
12名で100名近い役をこなす、と聞いていたので理解できるのだろうか、と不安だったのですが、
小物使いやジャケットを脱いだり着たり、声色の変化、セリフ回しなどで、役どころが変わるのを表現していてわかりやすかったです。
別のお役に変わる時は、ジャケットを脱ぎながら後ろに捌け、違う小物を身につけて登場して別人になります。
例えば、吉原光夫さん、警官の時はPOLICEと書いたキャップを被っていますが、ユダヤ教のラビになる時は、キッパというペタンとした帽子を被っています。
田代万里生さんは、イスラム教徒になる時は、ニットキャップを被り胸を張って、喋り方がゆっくりになります^^
濱田めぐみさんは、機長でとてもかっこいいのですが、加藤和樹さん演じる機長にメロメロの時はとても可愛いのです。
ご自身のお役を場面ごとに切り替えるので、今自分は誰なのか、を意識して演じておられると思います。
間違わないように、スピーディに…緊張感を持って演じてらっしゃるのではないかと思います。
セットはシンプル、でも満足
普段、宝塚歌劇の盆を回して、せりを上げ下げするゴージャスな舞台機構を観て楽しんでいますが、
『カムフロムアウェイ』、舞台上には椅子と机のみ。
椅子を並べ変えるだけで、飛行機の機内になったり、バスになったり、ドーナツ屋になったり、
後は観るものの想像力で補って…それもまた、楽しいです。
役者自身が椅子を動かして並べます。
さり気なく、セリフを言いながら、歌いながら、椅子が場面を作っていきます。
ある時は、椅子がバーベキューコンロにも早変わり^^
なんでも椅子で表現できちゃう、柔軟な発想が却って面白い。
お金を掛けないといい作品ができないのではなく、
演出家の力量でここまでできるのだ、と改めて思い知らされました。
トニー賞受賞作というのも納得です!
女性陣6人のうち、3人が宝塚OG
OGさんのご活躍を観るのは嬉しいものです。
中でも、このような素晴らしい作品に3人もキャスティングしてくださったスタッフさんに感謝です。
《安蘭けい》
今回も、しっかりとソロ歌唱場面をもらわれて、歌上手トップだったとうこさんを思い出してました。
石川禅さんとの、熟年の恋模様が描かれていて、とてもほのぼのとしました。
恋は若者だけのものじゃなくて、いくつになってもキラキラとした気持ちが素敵だな、と思わせてくれるお二人の演技でした。
《柚希礼音》
ちえちゃんをずっと観てきましたが、退団後、迷いがあったのか、なかなか自分の立ち位置を定められずにいるように見えました。(個人的感想)
『ボディガード』あたりから等身大で演じて肩の力が抜けてきてホッ…
でも、『ボディガード』では声が出にくくなり…と苦労もして、
今回のお役は、元気いっぱいのニューファウンドランド島の小学校の先生?
飛行機の乗客を学校で受け入れて、陣頭指揮をテキパキ!
等身大のちえちゃんだ〜 声も可愛くなって、やっと男役抜けましたね。
消防士の息子がいる設定で、同じくNYに消防士の息子がいるモリクミさん演じるハンナの心に寄り添うビューラの場面は、ホロリとさせられました。
《咲妃みゆ》
みゆちゃんも、舞台の評価の高い俳優さんでいろいろチャレンジされていますね。
今回は、客室乗務員と、島のレポーターというお役。
どちらも、きちんとした?アナウンスの役で今ひとつ個性がわかりにくいお役でしたが、みゆちゃんらしい、滑舌の良さとまじめなイメージがぴったりのキャスティングでした。
地道に堅実に
帝劇などの大箱の劇場で華々しくブロードウェイ・ミュージカルの大作に出演するのももちろんいいのですが、
このような味のある佳作に出演できた事がワタクシ的にとても嬉しいのです。
いち舞台人として、主役を張れるプリンシパル級のミュージカル俳優さんたちと共演できることはまたとないチャンス。
3人共トップ経験者ですが、このような作品は役者としての力量が問われ、宝塚のトップ時代とは違う芝居が観れて嬉しかったです。
その他の女性陣は…
《濱田めぐみ》
日本のミュージカル界を牽引する女優さんの一人だと思っています。
大好きなミュージカルスターさん。
歌上手、滑舌良い、お芝居巧いでもう最高でした!!
一足先に、昨日観てきた友人も、はまめぐさんベタ褒め!! 同感!
《森公美子》
元気いっぱいの『シスター・アクト』や怪しいおかみさん『レ・ミゼラブル』が代表作の森公美子さん。
今回は彼女のパブリックイメージを覆す、お役の数々。
ハンナは、息子が消防士で、息子の安否を心配しているお母さん、気弱な感じで、ビューラに励まされて…
最後に「死んじゃった…」とポツリと言うところでぐわっと心を掴まれて涙。
あと、アフリカ人? なんか言葉がわからなくて不安そうで上目遣いの眼差しでおどおどする感じが、とても良かった!w
《シルビア・グラブ》
ダグ(石川禅)の妻で、動物愛好家。
貨物室に閉じ込められたペットたちを救い出し、お世話するお役がメインどころ。
役どころ的にちょっとお役小さめな感じでした。
男優さんたちも語りたいけど長くなるのでやめておきます。
12人の精鋭の努力の結晶のような、素晴らしい作品。
演出の妙、役者の力量でぐいぐい舞台に引き込まれて、圧巻でした。
良いものを観た、という満足感でいっぱいです。^^