縣千くんの東上初主演公演の『FORMOSA!!』
「空想上の」というお役もある、と知ったときは、なにコレ、大丈夫?と
楽しめるかかなり不安になったのですが、
2024年12月9日13:30公演、観て…楽しかったです、引き込まれました!
やっぱり、ファンタジーより歴史を描く作品が好きなのだな、と自己分析してました。
目次:
⚠️ ネタバレの箇所があります、ご注意ください。
キャスト別感想
初日映像を観て、出演者の役作り、皆さん上手い!!と思いました。
それぞれが色濃く演じていて、引き込まれました。
縣千 サルマナザール(ジャン)
『エンジェリックライ』の、天界一の大ホラ吹きのアザエルより、よっぽど嘘をサラサラと吐きまくっているサルマナザール。
貧しい家に生まれたジャン。
両親は金儲けのためにジャンを修道院に預けて遠くに行ってしまいます。
修道院にはたくさんの書物があり、たくさんの書物を読み耽っているうちに空想の世界を作り上げていき…
ペラペラと空想話を展開するジャンは、詐欺師のイネス(華世京)に見込まれ、一攫千金を狙うことに。
サルマナザールとして生きているある日、地理学者のオズワルド(久城あす)に、君はフォルモサ人ではないだろう?と言い当てられ、
アイデンティティが激しく揺らぐのでした。
寛容なオズワルドに、初めて心を許し、泣き崩れるジャン、ここのあがちん(縣千)とあすくんのお芝居は胸熱でした。
他人だけでなく、自分をも騙しながら「サルマナザール」として生きていくことに葛藤するサルマナザール(ジャン)。
良心の呵責に苛まれながらも、何度も、フォルモサ人であることを主張する…
揺れ動く心を押さえつつ、主教や女王さえも欺くサルマナザール…という演技が絶妙でした!!
悩めるあがちんの演技、絶品♪
それにしても、これ、ほぼ史実だというのがドラマティック!
「事実は小説より奇なり」を地で行く、ジャンに命を吹き込んだあがちんと、演出の熊倉飛鳥先生の脚本。グッジョブです!
セリフのボリュームも、お芝居で絡む相手も多いあがちんですが
セリフを噛むこともなく、血の通った人物像を作り上げて素晴らしかったです!!
シェリル・オズワルド 音彩唯
地理学者、オリバー・オズワルドの娘(長女)。
役不足。
このお役はなくても通用するぐらいのお役で、歌上手、芝居もお上手なはばまいちゃん(音彩唯)には小さすぎるお役。
もったいないわ…😭
題材がサルマナザールなので、娘役さんのお役がないのは仕方がないですね。
大きなお役はアン女王(妃華ゆきの)ぐらいですが、こちらも出番が少ない。
今回は、東上初主演のあがちんにスポットを当てる作品、と割り切って…
ウィリアム・イネス[イギリス国教会牧師かつ詐欺師] 華世京
悪徳イギリス国教会牧師。
金儲けのために、サルマナザールを利用しているが、そのイネスもまた、悪の親玉・ペンブローク卿に支配されている、という構造が面白いです!
かせきょーくんは、とにかく、滑舌がいい、芝居が手堅い、骨太の演技で魅せてくれます。
まだ研5とは思えない安定感、習熟ぶり♪
頼もしいし、将来が楽しみ。
今回は悪に徹して見応えありました。
オリバー・オズワルド[地理学者] 久城あす
包容力のある父親であるのはもちろん、ペテン師のサルマナザールの嘘を見抜くも責もせず、見守っています。
あすくんの人柄がにじみ出るような、温かい人物像にじわ〜♪
ヘンリー・コンプトン[ロンドン教会主教] 天月翼
『蒼穹の昴』並の、老けメイクに老け芝居、本当に巧い!
あっさり、サルマナザールに騙されるのが観ていてやきもきw
絶大な権力を握る主教様が首を縦に振れば、誰もその決定に逆らえない、というのもハラハラにさせるのに十分な設定♪
ペンブローク卿[ロンドン裏社会の首領] 叶ゆうり
メイクといい、目つきといい、セリフ回しといい…そう、お芝居全体がねっとりと濃厚ですごくいい!!
こういう役者さんは貴重!! ずっと宝塚にいてほしい人材!
今回は特に、持ち味とお役が合ってます^^
長身ゆえの押し出し(圧)が強くて。
かのゆり(叶ゆうり)が相手だと、ワルのイネス(華世京)ですら小物に見えるし、
かのゆりがイネスの胸元を杖で小突いて凄むところが好き!w
ダマルフィ[ロンドン教会司祭] 眞ノ宮るい
ダマルフィ自身は、サルマナザールを怪しいと思っているのに、ボスの主教が、コロリと騙されているのが歯がゆそう。
去り際に、あがちんサルマナザールに「くそ!」ってすごい形相になるのも面白いです。
メリヤンダノー[空想上の革命家] 咲城けい
サルマナザールが空想で生み出した革命家。
とにかくものすごい存在感。
衣装もド派手!
1幕では立ち回りもあり、1幕ラストでは、あがちんサルマナザールと共にスポットライト浴びる中、幕。
2幕も冒頭から登場、2幕でもキャッチーな衣装で登場して、さんちゃん(咲城けい)がこんなに目立った公演は今までなかったのでは?
102期の咲城けい、星組から組替えしてきて、今後どのような使われ方になるのか、注目です!
フォンタネー神父[イエズス会神父] 紗蘭令愛
宣教師として中国に滞在経験のあるフォンタネー神父は、こんな東洋人はいない、サルマナザールは詐欺師だ、と正しいことを主張しているのに、
イエスズ会は、英国国教会とは相容れない仲なので、スルーされてしまう、という史実どおりのお役。
さらんくん、今回は目立つお役。
老け役も、お芝居もお上手でした、華やかなお顔なのにもったいないけど、ファンタネー神父の必死で訴える姿は熱演でした^^
エドモンド・ハレー[天文学者] 蒼波黎也
実在の…ハレー彗星を発見した天文学者。
天文学者故に、冷静な視線でサルマナザールの嘘を見抜き、
天文学の理を説いて、サルマナザールを論破する。
よっしーの落ち着いた演技は、ハレーの冷静な視点と合い通じるものがあって良かったです。
『ベルサイユのばら -フェルゼン編-』新人公演主演でフェルゼンを演じたのを観て、持ち味が違う感じがしましたが、
今回は、ぴったりのお役で説得力がありました、やっぱり巧いよ。
演出の熊倉飛鳥先生、グッジョブです!
18世紀頭初、イギリス中をペテンにかけたジョルジュ・サルマナザールという稀代の詐欺師、という題材をよくぞ見つけてきてくださいました。
宝塚は、どんなに客入りが良くても、人気の作品でも1ヶ月そこらで終わり、別の組の別の作品が始まります。
大劇場公演に別箱公演、年間に上演される作品数が半端ないです。
これだけ新作を量産していると、ネタが尽きてもおかしくないですね。
新しい感性で描かれる作品が望まれますが、熊倉先生の作品は、ワタクシの心を掴みました。
演出家不足、と言われている今の宝塚の新星になりそうな熊倉先生。
今公演、娘役には渋めの作品ですが、見せ場のコーヒーハウスやフォルモサの精として出番を作ってくださいました。
18世紀初頭と思えない斬新なダンス場面。
あがちん中心のイケメンバリバリダンスもあって楽しかった♪
フィナーレでは、少人数口で踊って観客に顔を覚えてもらう、という趣向もあり、生徒への愛があふれる『FORMOSA!!』でした。
楽しかった〜♪